30 4 / 2012
プール/桜沢エリカ
幻冬舎 2009.8 ISBN978-4-344-01714-6
自分が最優先の母親って、よく考えてみたら、そう悪くはないと思う。
同名の映画のために描き下ろした作品。映画の方はいろいろとカットされているので、こちらの方がわかりやすいと思う。映画を観、原作を読み、久しぶりに再び映画を観た。
この物語に登場する母親は子供を自分の母親(子供にとっては祖母)に預け、タイで働いている。大学の卒業旅行で母親に会いに来た娘が母に対して自分の気持ちをぶつける。「お母さんは自分勝手だ。自分はお母さんと一緒に暮らしたかった」と。母親は意外そうな顔で「そうだったの」と言う。
母と娘はまったく会ってなかったという感じでもないし、仕送り等はしていたのだと思われる。このシーンから察するに、娘はたまに会う母に、淋しいとかどうして一緒にいられないの?とか聞いたことはない。母親の方はその様子を見て安心して離れていたのだろう。「あなたを知っているから、ぐれるとかはあり得ないと思っていた。」という言葉は間違ってはいないが、しかし、娘の気持ちを全部わかっていたわけではなかったということになる。
おそらくは娘の方は母が自分勝手ではあるものの、働いているのが自分のためでもあるということは理解していたし、祖母との暮らしは自分の中では重要な生活要素となっていて、母親と一緒に暮らすために追いかけていこうとしなかったのが自分の意志であるということも理解している。母親の「そのとき、そのときの気持ちに正直に生きてきた。大人も子供もそうすべきだ。」という言葉に対して、娘は「子供はそうはいかない」と反発する。確かに、子供が本当に親を必要とするのは0~10歳くらいまでだから、一番必要なときに自分では選択肢がないとも言える。だが、女の子なら10歳を過ぎることにはもう自分の生活の方が大事で、母親なんかは二の次だ。だから説得力があるとも言えるし、ないとも言える。
母親は娘を捨てたつもりはまったくない。離れて暮らしているだけだと思っている。おそらく母親の方は自分と一緒に暮らすより祖母と暮らす方が娘にとって良いだろうと判断している。それは自分の都合が良いからという言い方もできるだろうが、本当にそう確信しているのだろう。だから娘の前で堂々としていられるのだ。少しも卑屈なところがなく、申し訳ないという気持ちもない。
最近たまたまオノナツメ「リストランテ・パラディーゾ」、近藤ようこ「あけがたルージュ」を読んだ。桜沢エリカ「プール」の3作品と共通しているのは、彼女らが娘を自分の母親に預けて離れて暮らすシングルマザーだという点。そして、娘たちはみな一様に良い子である点。母親を恨む気持ちはあれど、母親のことも理解している。そしてぐれたりはしていない。
母親たちはおそらく一様に若くして子供を産み、夫はいない。自らの手で育てるよりもまずは経済的な面を優先せざるを得なかった。現実的に自分と一緒に暮らしても、他人の手に育児は預けざるを得ない状況でもあった。他人の手にゆだねるのなら、愛情深い自分の母親にゆだねた方が良いという判断を下している。それは娘のために、娘と一緒に暮らすことが出来ないという自分に対してのデメリットを受け入れているとも言えるだろうし、前述したように、自分にとって都合が良いという面もある。
彼女たちは皆自分の人生を生き始めたほんの鳥羽口での出産だろう。子供より自分を優先したい思いも当然あった。そういった事情や母親の気持ちを娘達は皆、納得はしていないものの、心の底では理解はしている。
これが男の子だと話が違い、一気に「はみだしっ子」の世界へ突入する。グレアムは後に会った母親から捨てたわけではなかったと聞かされても素直に受け入れることはできず、アンジーも早い段階で和解を試みた母親を拒絶している。幼い頃の傷はそう簡単にはいやせない。彼等の場合は悲惨と言える点もあり、簡単に比較はできない。だが、一般的に男の子は母親に自分より優先するものがあることを許さないし、そのことで傷つき、根に持つのだ。一緒にいたら、14~15歳には「ババア」と呼んで、いないものとして扱うようになるくせに、だ。
それでもこれはフィクションの世界だからこうやって淡々と語ってはいるが、現実に自分の友達がこういう女性だったら、どう思うだろう?出来ることなら、自分の人生をある程度の時間きちんと生き、仕事や好きなことをした後、子供を一定期間だけでも最優先できる成熟度をもって産むべきか、あるいは若くして産んでも一定期間はやはり最優先し、どこかで一気に自分を最優先して家庭の枠の中から飛び出しても良いのでは?というかもしれない。
何がベストなのか、おそらくは一定期間は自分を殺して子供を最優先にし、ある程度育ったところで自分を最優先に切り替える母親だろう。上手にやれている人は現実には結構いる。そのタイミングをはかる能力や、そこに至るバランス感覚はなかなかのものだと思う。
最悪なのは最優先すべき自分がない母親だ。空っぽの自分を埋めるための存在として子供を産み、育てたとしたら、子離れできない母親が出来上がり、子供はある程度成長したところで、大切に育ててくれたことのプラス面よりも遙かにマイナス面の方が大きいことに気付くだろう。
タイミングを見はからうのは重要だが、自分を大事にしていない人が家庭を大事にできるとも思えないし、そういう意味で「プール」「リストランテ・パラディーゾ」「あけがたルージュ」の母親たちは迷ったり、迷っていなかったりといろいろだが、自分の意志で人生を生き、自分を大切にしているのは良い方に受け止めることが私は出来る。
この主人公の女性は著者の実際の母親をモデルにしているそうだ。母親を恨んでいたら、こんな作品は描けなかっただろう。そして作者が仕事を優先しながら、家庭を大切にし、そしてそれが出来るパートナーを選んだことは「今日もお天気」等の作品からよくわかる。
昔の自分なら、こういう作品は受け付けなかっただろうなと思った。
02 3 / 2012
Golondrina ゴロンドリーナ 1/えすとえむ
小学館 2012.3.5 (IKKI COMIX) ISBN978-4-09-188575-3
小学館『月刊IKKI』という青年誌に連載されている作品。青年誌への連載は初めてだし、巻数が複数にまたがるのも初めて。著者は闘牛の取材に何度もスペインを訪れているそうだ。取材で闘牛を見たのではなく、闘牛が見たくて行って、そして描きたくなったのではないだろうか。それだけ闘牛に対する情熱がそこかしこにあふれている。牛の描写、闘牛士たちの衣装、闘牛場の雰囲気、すべてから熱が感じられる。
舞台はアンダルシア地方の州都セビージャ近辺、フラメンコと闘牛のメッカで、外国人がスペインと言ったときに思い浮かぶ一つの雰囲気をもっている。南の人たちは何かと熱いらしい。アンダルシア・ダービー(ベティス×セビージャ)なんか見ていると本当にそう思う。アントニオはおそらくマドリーに住んでいる元妻に会いに行ったときにチカと出会い、連れて帰ったのだろう。
作中でも触れられているが、闘牛はスペインではもはや古くさい、田舎の出し物で観光客向けのショーのように思われ、テレビ中継もされず、若い人はわざわざ観に行ったりすることも減ったそうだ。バルセロナのあるカタルーニャ自治州では闘牛は2012年1月から禁止されている(そういう都会の先駆的なところが鼻について、アンチ・バルセロニスタなんだろうな…)。それは残酷さ故だろうが、そもそも人間は牛を殺して食べる。外国人としてはそれを見せ物にするのが悪いとは思わないのだが、自国の人が言うのなら仕方がない。鯨食うなと同じようなことか。
話はまだまだ緒についたところだ。チカがマリアを恨む気持ちやアントニオがチカを育てようと思った理由などはわかったが、セチュがなぜ都会での生活を捨てて友達に過ぎないチカをアントニオから守ろうとするのか、自分も逃げ出したかったのはあるのだろうけれど、ちょっとまだ理由があるような気もする。
夜の暗い場面と昼の牧場の明るい場面がベタだけでなく明らかに違うように見える。大雨の夜の出会いから始まるが、闘牛場やチカが携帯を投げた空は青いし、ランニングをする早朝は薄暗い。これが画力というものなのだろうか。スペインの空気が光と影を通じて伝わって来る。闘牛士を育てる方法なども、きちんと取材をした結果なんだろうなと思う。知らない世界を教えてくれるのはありがたい。それもスペインのことなら尚更だ。
残念なのは連載時よりカラーが少ないことだ。この作品の連載が終わる頃には画集が出て欲しい。素晴らしい絵だからもったいない。表紙を見て同じように思う人が多いのではないだろうか?
第1回 El Matador … 「月刊IKKI」2011年8月号 2011.6.25
第2回 Corrida de toros … 「月刊IKKI」2011年9月号 2011.7.25
第3回 La vaca … 「月刊IKKI」2011年10月号 2011.8.25
第4回 El asesino … 「月刊IKKI」2011年12月号 2011.9.25
第5回 Como aqua fluida …「月刊IKKI」2012年1月号 2011.10.25
第6回 frente del toro …「月刊IKKI」2012年2月号 2012.12.25
01 12 / 2011
やがて、藍になる/えすとえむ
東京漫画社 2011.12.20 (MARBLE COMICS) ISBN978-4-86442-029-7
幼い頃、理由あって「兄弟」として暮らすこととなった大青と紺太。
しかし大人になるにつれ、弟・紺太へ兄弟以上の愛情を自覚した大青は、想いに耐えきれず家を出てしまう。
ところが数年後、突然実家に戻ってきた大青は、紺太に「家業を教えてくれ」と頼み込み、再び2人の同居生活を始めるのだが…。
兄の気持ちを知りつつも、見て見ぬフリをする弟。
弟に自分の気持ちを認めさせたい兄。
藍染めの工房を舞台に、義兄弟の想いが巡る、えすとえむ期待の和テイストBL!!
■初出誌
やがて、藍になる 第一話…「Cab」vol.9 2010.8.25
やがて、藍になる 第二話…「Cab」vol.10 2010.10.19
やがて、藍になる 第四話…「Cab」vol.12 2010.2.24
やがて、藍になる 最終話…「Cab」vol.13 2011.4.25
大青…描き下ろし
泳ぐ、溺れる、泳ぐ…「Cab」vol.4 2009.10.20
しんしんと雪の降る…「Cab」vol.6 2010.2.20
藍染め工場という日本の伝統工芸の世界を描いた作品で、カラーの表紙の装丁やオビがとても凝っていて美しいです。兄弟という縛りの中、二人の想い合う気持ちが切ない物語です。兄と弟は違う道を選び、再び交錯したと思うとまた別れて…というお話で、中身も美しいですね。
BL誌なので、二人の「愛」を中心に描かれていますが、できればこれが「愛憎」だともっと深かったように思えます。兄は弟の才能に嫉妬して出て行ったが…というような。それで「愛」の方はもっとギリギリなプラトニックにしてしまうと、広範囲な読者を得られたかもしれません。これはBL誌ならではの縛りですが、逆にBL誌でなかったら、こんな地味な世界を描くことが出来なかったかもしれない。そう考えるとこういう作品であることは納得できます。
あとがきにありましたら、作者のお母さんは染色家だそうで、ずっと身近で見ていたけれど、あらためて藍染工場に行ったそうです。美的センスはやはり血筋もあるのかもしれませんね。
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01 12 / 2011
Khaa Thoong/えすとえむ
24ページ
収録書籍「ダメBL」ブックマン 2011.12.7
勝ち続けるあまりに対戦者がいなくなったムエタイ王者・カーには、どうしてもムエタイを続けたい理由があった…。
ダメBLとは、なんらかの理由で「ダメ出し」をされ、発表できなかったBL作品のこと。2010年5月に雲田はるこさんがこぼしたツイートがきっかけで集まった作品。詳細はこちら。
この作品の場合は「ムエタイがなじみのないテーマだったから」という理由だったそうだ。これがダメならと描いたのが「ULTRAS」。
総合格闘技なら少年誌・青年誌にはあっても少女漫画には厳しい。その上更にマイナーなムエタイときたら、確かに載せられないかもしれない。でも陽の目を見て良かった。
ページ数の問題もあったので、これはこれで良いと思うが、32ページあったらカーが何故自分のジムの存続にこだわるのか、ファーローンとのやりとりなんかが綿密に描けてもっと面白かったのになと思った。
08 10 / 2011
皺/パコ・ロカ
パコ・ロカ著,小野耕世,高木菜々訳 小学館集英社プロダクション 2011.8.10 ISBN978-4-7968-7091-7
元銀行家でエリートだったエミリオが退職後数年経ち、アルツハイマーの初期症状が出てきたために老人ホームに入れられる。その施設では一階は自分の身の回りのことが出来る人たち、二階は介助が全面的に必要な人たちに分けられている。エミリオは同室のミゲルの助けを借りながら、二階に行かずに済むよう努力を続けるが、症状は次第に重くなり…。
えすとえむさんがスペインで見つけて、小野耕世さんが翻訳して出した本のようだ。書評家のお歴々の評価は高いが値段も高いので悩んだが、結局普通に新刊で買った。思い切って買って良かった。何度も読み返さないと、細かいところまでわからないし、半分以上カラーだし。ラストの顔が見えなくなっていくシーンとか、わかりやすいマンガ的表現だけれど、こういうところが欧州ではいいんだろうな。日本の漫画に比べてもどうしても表情に乏しいとかコマ割りに工夫がないとか感じてしまうが、一コマの構図とかがすごくていねいに描かれている。雑誌連載をベースにしている日本の漫画だと、こんなふうにじっくりと作品に取り組むのは難しいかもしれない。ヨーロッパの漫画家は日本の漫画家のように量産しないのだそうな(えすとえむインタビューより)。取材を重ねて様々な老人たちの姿を描いているが、重苦しいような話ではない。
一緒に入ってた「灯台」の方がテーマ的にはしっくり来る。スペイン内戦のお話だからだ。これも実際に作者が見聞きしたエピソードが入っていて、じんわりとする。
こんなに良い本なのに、漫画だからって図書館に入らないのは本当にバカげてる(→カーリル)。都心の大きめの図書館には入ってるが少ない。入れ始めたらきりがないと言うのだろうが、版元から取り寄せできるし、普通の漫画と違うのは版元でわかるのに。そういう手間暇を惜しむのはもったいないなと思う。
08 10 / 2011
25時のバカンス―市川春子作品集II
講談社 2011.9.23 ISBN98-4-06-310780-7
■初出誌
能なしの私には市川春子を語る言葉がない。「うわ、すごい」「きれいだ」「哀しい」「面白い」「なんだこれ?」という感嘆符ばかりが繰り返される。圧倒されている状態がまだ続いているのだ。
だから『ダ・ヴィンチ』2011年11月号に掲載されたインタビューを読んで、自分が気になったことの答を教えてくれているので、そこをまとめてみたいと思う。
1) 人間ではない生き物への愛情:異形のもの好き→これは他人との距離をわかりやすく表現するために非人間的なものを描いている(インタビューより)
2) 兄弟姉妹へのこだわり(「25時のバカンス」は姉と弟、「パンドラ」は兄と妹、「月の葬式」は兄弟(本当ではないが)。→これは「近くて遠い感じが一番出しやすい」から。微妙な距離感を表現するのに使っている(作中「兄弟って近いようで遠いな」と甲太郎に言わせている)。
3) 狂おしいほどの愛→とにかく「愛」ですよね。みんな。「25時のバカンス」の乙女は弟のために研究を続けてついには貝になってしまう。よみちは間を救うために2年間猛勉強して帰って来る。ロロはナナたちを助けた宇宙生物(ナナたち込みで)とともに兄の命令に背いていく。
つまり、他人とは自分と違う生き物で、だからどうしても距離ができる。近いと思っていても遠かったりする。そんな他人を狂おしく愛して、命を投げ出す人間って美しい(orおかしいor興味深い)。
「ハッ」と息をのむようなシーンをかならず作っている。見開きの美しいシーンに息をのむ。「パンドラ」のダンス・シーン、「月の葬式」の月が落ちてくるシーン。「25時のバカンス」は見開きではないが、乙女が海に落ちていくシーン。その一方で「25時のバカンス」「月の葬式」には「ギョッ」とするシーンがある。乙女が顔をあけるシーンと間がセーターを脱ぐシーン。
ちょっとすぐにわからないSFっぽいところが、みんなの言うように萩尾先生っぽいのかなぁ。あまり私はそう思わないんだけど。最初の頃よく言われた高野文子っぽさは、2冊目でかなり払拭されている気がする。天才だなぁと思うのだけど、ちょっと以前より作品発表の頻度があがってきた。嬉しい一方、少し不安も。グラフィックデザイナーの仕事も続けているんだと思うんだけど、どうなんだろう?
19 9 / 2011
東北沢5号 2/松田奈緒子
集英社 2011.9.20 (りぼんマスコットコミックス) ISBN978-4-08-867143-7
地元のカレシ・高志が下北にやってくるが、盾一のことが頭から離れない千帆子。自分の気持ちが抑えられず、再び盾一に会いに行くが…? さらにミチの人生に影を落とす想像を絶する過去が明らかに!! 下北沢の街で繰り広げられる様々な人間模様がここに。
■初出誌
東北沢5号…「Cookie」2011年4月号~2011年8月号
マサトのうまうまクッキング…描き下ろし
下北沢の良さがストレートに伝わって来る作品。不思議な感じのお店のマスター、銭湯、アパート経営のうるさいおばあちゃん。下町の良さと若い人の新しい風とがマッチングした不思議な街だなと思った。あの、独特のごちゃごちゃ感が私ももちろん嫌いではない。
千帆子の無防備さにハラハラさせられるのは、物語の最初からだ。だが千帆子は意外にタフなところもあり、周囲の助けを呼び込めるだけの明るさとあいまって、なんとか乗り切っている。突然やってきた田舎の彼氏も、追い出された部屋も、うまくこなしているが、問題は盾一との関係だ。人が人を求めるのはもちろん欠けているものがあるからなのだけれど、盾一が千帆子を必要としている理由は幼すぎて怖いし、それに応えようという気持ちの千帆子も危なっかしい。夢中になりつつも自分のペースを崩さないうちは大丈夫そうだけれど。
明るくて素直で図太いところもあって、本当に千帆子には救われるが、それでも親に捨てられた子供たち全員を千帆子一人で救えるわけもない。ミチや盾一は「はみだしっ子」たちがそのまま大人になってしまったようで、胸をうつ。
真夜の動きも怪しいし、マサトやマチルダも何かありそうだし、まだまだだ。「レタス・バーガー」以来、久しぶりの長編連載になるのかもしれない予感がある。
14 9 / 2011
うどんの女(ひと)/えすとえむ
キノくん、田中先生じゃなくても、チカでなくても、カワイイと思う。
祥伝社 2011.9.15 (FEEL COMICS) ISBN978-4-396-76531-6
■初出誌
94円…「FEEL YOUNG」2010年7月号
0.5杯目…「FEEL YOUNG」2010年10月号
1杯目…「FEEL YOUNG」2011年1月号
2杯目…「FEEL YOUNG」2011年2月号
3杯目…「FEEL YOUNG」2011年3月号
4杯目…「FEEL YOUNG」2011年4月号
5杯目…「FEEL YOUNG」2011年5月号
最終杯…「FEEL YOUNG」2011年6月号
描き下ろし
美大の学食でうどんを作っている村田チカは35歳バツイチ出戻り。学生に「おばちゃん」と呼ばれるが、まだまだイケてるつもりだ。そんな彼女の元へ毎日うどんを食べに来る油絵科の学生・木野は頼んでもない具をうどんにのせてくれるチカが気になっている。チカの方でも食べ盛りの年齢なのに毎日うどんを頼む木野のことが気になる。お互いに相手が自分を気にしているような気がしているようだ。年の差のせいもあって、なかなか近づけない二人だったが…。
「94円」という短編が「FEEL YOUNG」に掲載されたとき、ものすごく面白いなと思った。多分それはあの“妄想合戦”のせいだと思う。直後「0.5杯目」という作品が出て、連載化されるのかなと思っていたら、するっと連作が始まった。トーンは特別変わらないのに、「94円」の時に比べるとぐっとテンポが落ちた感じがした。
村田さんが何者かわからないことがポイントなのに、田中先生が登場することによって正体が明かされていくと、ちょっとつまらなくなっていく気がした。あのまま「94円」だけでいれば良かったのにとも思った。連載を読んでいたのだが、次第にわくわく感が失われていくような気がしていた。
しかし、単行本としてまとめて読んでみると、あらためて面白い。最初に面白いと感じた、二人の妄想合戦はちゃんと続いていたし、テンポが落ちたと感じていたのは、連載による間延びのようだ。すっきりまとまっていて、良い作品に仕上がっていると思う。「うどん」というモチーフがいいのかもしれない。暖かく、艶めかしく、シンプルで、おいしい。
年の差や立場がある設定で、それなりに障害があって、ストレートに話が進まない。こういう恋愛の初期にある、お互いの気持ちをはかりかねた状態の時の物語が自分はあまり好きではない。お互いあれこれ深読みしている話には特にイライラさせられる。もともと恋愛がメインの作品を好まないところもあるが、単に気が短いのだろう。それに、それまでの妄想は単なる取り越し苦労か、と思わせるエンディングの物語が多いせいもあり、徒労感が隠せない。
だが、この二人の妄想は単純明快で悪くない。それに、妄想を絵に描くことで具現化し、最終的にはそれを本人に提示して告白するという手法はカタルシスがある。それまでの間の妄想が無駄にならないというか、効率の良さを感じてしまう。そういうところが良いというと、変に思われるかもしれないが、いろいろ考えているだけなのはどうもストレスがたまる一方なので、読む気になれないのだ。
ただ、今回作者に少しストーリーに迷いがあるように感じたのは私だけだろうか?
ここに装丁に関するブログ記事がある。
WORKS_comic 『うどんの女』―NARTI;S blog―
キャンバス日誌、『うどんの女』えすとえむさん編。―NARTI;S blog―
08 9 / 2011
単行本未掲載作品/えすとえむ
5g(24p)…「メロメロ」(宙出版)vol.5 2007.3.27
パートタイムヒーローブルース(22p)…「激男」(古川出版)vol.12 2008.3.27
Beautyful Nosebleed…「激男」(古川出版)vol.13 2008.7.14(※鼻血フェチの修正屋と雑誌モデルのアバンチュール)
シックスティーン…「Cab」 vol.5 2009.12.18 東京漫画社

おとぎ話―エバーアフター…「BOYS DUO」(ケータイマンガ王国。PCの場合:COMIC SHOWTIME)
1 シンデレラ~SM仮面舞踏会…vol.9 2009.11
2 オオカミ×肉食赤ずきん…vol.10 2009.12
3 人魚の誘惑 前編…vol.13 2010.3.
4 人魚の誘惑 後編…vol.14 2010.4.
5 かぐや姫…vol.16 2010.6.
その男、甘党につき…「Otome Continue」 (太田出版)vol.1~6 2010.7.6~2011.5.10(※vol.6で休刊)
小説家の妻(16p)…「FEEL YOUNG」2011年10月号 2011.9.7
うどんの女 番外編(8p)…「FEEL YOUNG」2012年2月号 2012.1.7
※チカの元旦那・田中先生のお話。
かみさまのトロンボーン(8p)…「僕らの漫画」第3弾(東日本大震災復興支援コミック)
2012.1
※震災で亡くなった中学の同級生の方のことを思いながら描かれたそうです。彼はトロンボーンをふいていたそうです。
http://charicomi.blogspot.com/2011/12/blog-post_15.html
https://twitter.com/#!/est_em/status/157803333892059138
https://twitter.com/#!/est_em/status/157804153295474689
https://twitter.com/#!/est_em/status/157804676505550849
いとしのもじゃっ毛(ねこっけトリビュート)…「Citron」vol.13 p23 リブレ出版 2012.3.11
※雲田はるこ「いとしの猫っ毛」へたくさんの漫画家さんが1ページずつ思い思いの作品を寄せられています。
08 9 / 2011
連載中作品/えすとえむ
●Golondrina ゴロンドリーナ
第7回 …「月刊IKKI」2012年3月号 2012.1.25
第8回 …「月刊IKKI」2012年4月号 2012.2.25
→IKKI公式サイト「イキパラ」(小学館)
●トルコシリーズ
トルコシリーズ 1 カルンジャ(32p)…「onBLUE」vol.1 2010.12.10
トルコシリーズ 2 クシュ(45p)…「onBLUE」vol.2 2011.5.5
トルコシリーズ 3 ファーレ…「onBLUE」vol.3 2011.9.5
トルコシリーズ 4 ユラン…「onBLUE」vol.5 2012.4.25
トルコシリーズ 5 …「onBLUE」vol.6 2012.7.25予定
→onBLUE
●GALLOP!
「クロフネZERO」2011 Summer 2011.5.28(健太郎一行の研修温泉旅行)
「クロフネZERO」2011 Autumn 2011.8.27(選挙の話)
「クロフネZERO」2011 Winter 2011.11.28(子供ケンタウロスたちの体験学習)
●IPPO
0話…「ガールズジャンプ」2012…2012.1.27発売
1話…「ジャンプ改」2012年3月号(vol.8) 2012.2.10発売
2話…「ジャンプ改」2012年5月号(新創刊号) 2012.4.10発売
→ジャンプ改






